Top News 父喜紹介 徒然父山 喜也草子 CD 冷岩-coolrock- X'mas ×X'mas 父喜苑 2006.01.20.


■かけがえのないもの   01.10.


父山であります。

一人の幼馴染が居た。
3軒先に住み、幼稚園から高校まで同じ学校に通い、20代半ばはずっと一緒のバンドで活動していた。
彼は当時としては高価だったマルチトラックレコーダーやドラムマシン等をいち早く入手し、多重録音での作品作りをしていた。
小生も良く呼ばれて、機材の貸し借りをしたり、ベースを弾いたり、コーラスをダビングしたりして遊んでいたものだった。

彼は音楽の道へは進まなかった。
それから20年の時が流れた。

年も押し迫ったある日、彼から一枚のDVDが送られてきた。
それは、彼が10代の頃から最近まで作り続けていた曲のmp3がぎっしりと入っていた。
その数176曲。
全てにiTuneフォーマットで歌詞と解説、アートワークが付けられていた。
カセットテープから取り込んだと思われる、ヒスノイズが多く時たま音飛びのする、お世辞にも良い音とは言えないその曲たちに、
小生は涙を止める事が出来なかった。

そこには彼の音楽の全てと共に、小生の音楽的原点が凝縮されていたのだ。
リズム、メロディ構造、コード進行、転調の仕方、コーラスの組み方。
貧弱な機材を創意工夫で駆使する気力と好奇心。
そして何よりも「音楽をやりたくてたまらない」という思い。
未熟で前のめり気味ではあるが、持てる力と技を総動員して作られた音たち。

あの時から、どれほど前に進めただろうか?
確かに知識と経験、技術は積み、その結果、音楽を生業とする者の端くれには辿り着いた。
しかし失ったものはないだろうか?
それは失ってはいけないものではないのだろうか?

誰かに聴かせても、音の悪い、良く解らない曲にしか聴こえないかも知れない。
おそらく同じ時間を過ごし、同じ物を見、同じ体験を共有した者にしか解らないのだろう。

音楽の価値は自分だけのもの。そしてかけがえのないもの。
大切なものを思い出させてくれた彼に、深く感謝したい。

Thanks,Toel.