Top News 父喜紹介 徒然父山 喜也草子 CD 冷岩-coolrock- X'mas ×X'mas 父喜苑 2005.07.20.


■考え方の根源   07.10.


父山であります。

鬱陶しい空模様が続くこの頃、如何お過ごしでしょうか。
この湿潤が豊かな緑を育み、日本の四季を形作るのだと思えば恵みの雨と考えねばなるまいが、それが災害に発展してしまうのは困り者だ。
被害を受けられた地方の方々には、衷心よりお見舞い申し上げます。

さて、このところ通常業務と父喜制作の二本立てで音漬けの為、音楽を聴く事を少し制限している。
未熟者な小生、聴いた音が作品に無意識に反映してしまう危険があり、それを防ぐ為だ。
そのような訳で、このコラムではしばらくCD紹介はあまりないであろう事をお許し頂きたい。

その代わりという訳ではないが、時間の許す限り本を読む事にしている。
目についた面白そうなものをつまみ食いするといった乱読の極みだが、最近読んだ中で面白かった本を一冊、ご紹介しようと思う。

「比較文化論の試み / 山本七平」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061580485/qid%3D1120841759/249-9211008-0442741

日本人とヨーロッパ人、ユダヤ人、アラブ人との差異を、ことばや宗教、法意識などを通して解明した独特の比較文化論だ。
というと何やら難しく聞こえるが、講演内容を元に加筆されたもので専門用語も多くなく、何より薄い(笑)ので読みやすい。

例えば日本人の宗教観について。
筆者の行った大学生を対象にしたアンケートによると「自分は宗教を必要としないが、必要とする人がいる事を否定はしない」という回答が
がかなりの割合を占めるという。
しかし「何故そう考えるのか?」という質問に対しては「別に理由などない」という回答が大多数だという。
筆者は吉田松陰、福沢諭吉の例を挙げて、これは幕末から明治維新にかけての啓蒙主義に起因した思想であると分析している。
しかし日本人の中にそれを意識する人はほとんどいない。
そこに問題がある、と。

何故自分がそう考えるのか?
自分の意見や思想の根拠を歴史的に把握できないと、自分の見解が世界標準で普遍的なモノであると思い込みがちだ。
自分の考えは、ある時代、ある地域の中でしか通用しない、極めて限定的な考え方であると気づく事の重要性を、筆者は力説している。

いささか断定的な部分もあり、全てを鵜呑みにする訳にはいかない内容ではあるが、思い当たる節も多く、
自分を含めた日本人の考え方の根源とは何かを考える良いきっかけになった。

創作に当てはめてみれば、己が表現の寄って立つ所を自覚せず、聴く立場を考える想像力を持たずに創作を行えば、
それは決して説得力、普遍性を持ち得ない、という事になろうか。
(もちろん、全ての作品が普遍性を持っていなければならない訳ではないが。)
音楽の歴史という観点からすれば、現在音楽を創作する者は先人の豊かな遺産を享受し、それを自分というフィルターを通して後世に伝える、
果てしなく繋がる環のひとつであると考えられ、自ずと謙虚な姿勢になれるように思う。

ささやかで良い。想像力を駆使し、奇麗な色の環を残したいものだ。